千夜一夜物語と図書館司書資格取得について語るブログ

千夜一夜物語(アラビアンナイト)と図書館司書資格勉強について投稿します。

禁じられたものほど欲しくなる「アラビアンナイトのエロティックな魅力①」

    こんにちは。絆創膏です。

 

 

 

    まずはこちらをご覧ください。

 

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………うん、セクシー!

    バートン版千夜一夜物語一巻の表紙です。

    全11巻ですが、ほぼ全ての表紙に扇情的な姿やポーズをした女性が描かれています。エロティックさだけでなく、美しさも感じる絵ではありますが、児童文学やディ◯ニーのイメージが強い方が見たらびっくりしますよね。しかも中の挿絵も大体こんな感じです。

 

    誤解を恐れずに言えば、千夜一夜物語は官能小説もかくや、というくらいのアダルトな物語なんです。

    美しい愛や燃え盛る情熱の元に男女が交わる様を描くものもありますが、ただ色情の元に淫靡な行為に耽ったり、乱交や、当時は御法度だった同性愛、現代でもあまり好ましくない近親相姦など、その内容も多種多様です。そもそも最初が妃の不倫と大乱交から始まりますしね。

 

 イスラム教の聖典であるコーランでは婚前交渉は禁じられています。それに、女性は外に出る際は、頭まで含め肌を隠さなければなりません(度合いは場所によって違うようです)。

 つまり、千夜一夜物語で繰り広げられるような痴態は、現実の中東ではまずありえないと言えるでしょう。

 ではなぜ千夜一夜物語ではこのような淫靡な行為が描かれているのでしょうか。考察してみます。

 

 我々日本人と比較して、イスラム教徒はかなり禁欲的な生活をしています。酒は基本NGですし、断食もあります。断食中は、妻(夫)との日中の性交渉も禁じられています(もちろん夫婦間でない性交渉はご法度)。

 加えて断食中でなくとも、女性はほぼ全身を隠して見えない状態になっています。かなり性的衝動を抑圧しているのではないかと予想されます。つまり、千夜一夜物語の官能的な内容は、当時のイスラム教徒の性的衝動のはけ口ではないかと思うのです。

 

 現実ではその衝動を発散させることができないため、物語にそれを求めたのではないでしょうか。しかも直接的に官能的な内容だけでなく、近親相姦など、明らかにアウトな話もあります。

 しかし、近親相姦の話は、お互いが兄妹だとしらずに事を成し、子を成すのです。コーランによれば、唯一神アラーは、無知による失敗については、その後悔い改めて誠実にアラーに尽くせば罰を与えることはしないといった寛容な神様であるようですので、もしかしたら、このお話の作者もストレートに近親相姦をネタにするのは畏れ多く、聖典をかいくぐるためにからめ手を使ったのかもしれません。

 

 ちなみに、近親相姦があるお話は、バートン版では「オマル・ビン・アル・ヌウマン王とふたりの息子シャルルカンとザウ・アル・マカンの物語(第45夜‐第146夜)」となります。

 近親相姦までのあらすじは以下の通りです。

 

ある時代のバグダードにオマル・アル・ネマーン王がいた。いくさに強く、版図を遠くひろげ、内には寛仁大度をみせて尊敬をあつめる名君である。オマル王にはひとりだけ息子がおり、王子シャールカーンは武芸に秀でた勇敢な男であった。だがその後、オマル王の側室サフィーアが懐妊し、男女の双子を産む。最初に生まれた女の子はノーズハトゥザマーン、次に生まれた男の子はダウールマカーンと名づけられた。男の子が生まれた場合、将来の王位争いを避けるため殺してしまおうと考えていたシャールカーンだが、最初に女の子が生まれた時点の報告しか聞いていなかったため、男の子の存在を知らない。

ある日、ルーム(ローマ)とコンスタンティニアの王アフリドニオスの使者が来て、カイサリア王ハルドビオスとの戦争に同盟を持ちかけてくる。ある族長がアフリドニオスに献上しようとした数々の霊験をうちに秘めた三つの宝玉を、カイサリア軍が横取りしてしまったため何度か攻め込んだのだが、歯がたたないというのだ。大宰相ダンダーンとシャールカーンが兵を率いて派遣された。

軍はある谷で大休止をとるが、ひとり地形偵察に出たシャールカーンは、キリスト教の僧院で相撲をとっている美しい白人の乙女とそれにかしづく美女奴隷たちを見る。欲情したシャールカーンは剣をとって乱入し、我のものになり一緒に来るよう要求するが、乙女は承知しない。乙女に恋してしまっていたシャールカーンは、せめて歓待を受けさせてくれと申し入れ、乙女は彼を僧院へいざなった。

次の日目覚めると、乙女はシャールカーンの正体を知っていた。彼はその日から数日間歓待を受ける。歓待を受けている途中、カイサリアの貴族マスーラの軍が押しよせてきてシャールカーンを出せと要求。乙女はハルドビオス王の娘、アブリザ女王だった。アブリザはシャールカーンをかばって別人だというが、マスーラは是が非でも引き連れていくと言って聞かない。それなれば、一人対百人の兵ではなく、順番に一対一で戦って勝ったならば連行せよ、とアブリザは命じた。シャールカーンがすべての兵を撃退すると、アブリザは、自分は折り合いの悪い老婆「災厄の母」によって回教徒に与したとされるだろう、ここから立ち去るのを手助けしてくれと言う。そしてこの戦争が罠であることを明かす。

実はサフィーアはアフリドニオス王の娘であった。ある祭りの帰途、サフィーアが乗る船が多くの美女たちとともに海賊に鹵獲され、カイサリア軍が海賊を駆逐してサフィーアたちをハルドビオス王に献上し、ハルドビオス王はそれをまたオマル王に贈ったのである。アフリドニオス王はそれを知ると、ハルドビオス王と協力してオマル王に復讐しようとしたのだ。ただし宝玉は実際に存在し、アブリザが所有している。それを知るとシャールカーンは自軍にもどり、兵をまとめて帰還させる。殿軍をつとめるシャールカーンに手強い騎兵が追いすがるが、それは後を追ってきたアブリザだった。彼らは連れだってバグダードに入る。

報告を受けたオマル王は、献上された宝玉を三人の子にわけあたえる。ここで初めてダウールマカーンの存在を知り、また、オマル王にアブリザへの欲望を見たシャールカーンは、ひどいショックを受けてしまった。

再三アブリザをくどくオマル王だが、アブリザは拒否しつづける。そこでオマルは麻酔薬をもちい、アブリザが寝ているうちに処女を奪ってしまった。アブリザは懐妊し、やがて臨月になると、忠実な奴隷女と屈強の黒人奴隷をひとりずつ伴い、故国をめざして出奔する。道中欲情した黒人奴隷はアブリザに襲いかかり、彼女が自由にならないと知るとこれを殺し、姿をくらます。最後の息で男の子を産みおとすと、そこにハルドビオス王が現れ、子を国へ連れかえった。ハルドビオス王は復讐を誓い、災厄の母の進言を聞いて、オマル王を閨房から罠にかけるため、美女をあつめてアラビア式の教育をほどこしはじめる。一方、アブリザがいなくなったことを知ったシャールカーンはいたく傷心し、父王に頼んでダマスの太守に任命してもらい、宮殿を出た。

十四歳になっていたダウールマカーンは、姉ノーズハトゥをさそって父王に内緒で巡礼に出る。しかし途中で熱病にかかり、治療のために金もつきてしまった。働きにいくといって出て行ったノーズハトゥはそのまま姿を消し、漂白したダウールマカーンは、ある風呂焚きにひろわれる。回復したダウールマカーンは風呂焚き夫婦を従者にして帰国の途につく。ダマスにつくと風呂焚きの妻が熱病で病死するが、ひきつづきバクダードに向かうことにする。

一方、ノーズハトゥはベドウィン人に誘拐され、ダマスの奴隷市場で売りに出されていた。ふっかけるベドウィン人に対し、ある商人が十万ディナールの値をつける。ノーズハトゥがあらゆる学問に通暁していることを知ると、商人は喜び、彼女をシャールカーンに献上する。シャールカーンはノーズハトゥを解放し妻とすることを宣言。学問を示せというシャールカーンに対し、ノーズハトゥは「三つの門についての言葉」を物語る。

人生の目的とは熱誠を発達させることであり、その道には三つの門がある。第一の門は「処世術」、第二の門は「行儀」と「修養」、第三の門は「徳の門」。


ノーズハトゥは博覧強記を発揮し、古今の逸話をひいて熱弁をふるう。聞いていた一同は感激し、そのまま婚礼をとりおこなう。ノーズハトゥはたちまち懐妊し、喜んだシャールカーンはオマル王へ書簡で報告する。

父王からの返書で双子が失踪したことを知ったシャールカーンは、娘を産みおとしたばかりの妻に報告しようとする。すると、赤子の首に宝玉が吊るされていることに気づいた。驚いて聞くと、妻は自分がオマル王の娘であることを明かす。シャールカーンもまた、自分が王子であることを告白する。なんと、兄妹が互いにそれと知らず、結婚してしまっていたのだ!これをかくすため、一度も同衾することなく離別して侍従長と結婚させたということにし、「運命の力」と名づけた娘をそこで養育させることにした。

オマル王から第二の飛脚がとどいた。老女に率いられた学識豊かな五人の乙女がルームからきており、これを購入するためにシャーム地方の年貢一年分が必要である。年貢をバクダードに送り届け、ついでに教養があるという汝の妻を当方に派せ、という。ノーズハトゥが侍従長とともに父のもとに向かい、事情を説明することにした。そのあいだ運命の力は、ダマスで大切に育てることになる。

ダウールマカーンがダマスを発ったのは同じ日のことで、隊列のあとについて旅をし、やがてバクダードにほど近い地で野営する。懐かしさに詩をうたうダウールマカーンの声に気づいたノーズハトゥは、宦官に命じて三度まで歌った男を探させる。姉弟は再会を果たし、互いにこれまでのことを告白する。このとき侍従長ははじめて自分の妻が王女であることを知った。

さらにバクダードに向かう一行の前に大軍があらわれた。これを率いる大宰相ダンダーンによると、オマル王は殺されたのだという。跡継ぎはシャールカーンと決まり、自分は迎えにゆく途中なのであるが、都にはダウールマカーンを推す勢力ものこっているらしい。侍従長がダンダーンに事情を説明すると、緊急会議がひらかれ、ダウールマカーンを新王に迎えることになる。王座につくと、ダウールマカーン王は父の死の事情をダンダーンに問うた。……

(引用 千夜一夜物語のあらすじ - Wikipedia )

 

 長いのであらすじはここまで。気になる方は、Wikiか原作を読んでください。

 このように、千夜一夜物語はあの手この手で聖典の啓示をかいくぐり、様々なアダルティックカテゴリーを楽しめるようになっています。

 性にはかなり厳格なイメージのあるイスラム教ですが、表現規制みたいのはなかったんですかね?日本も少し前まで漫画・アニメの表現規制が云々って話出ていましたけど、今どうなってるんだろう…?

 

 ということで今回は、ストーリーの面からアラビアンナイトのエロティックな魅力について考察してみました。

 次回は、表紙や挿絵に登場する女性の服装・見た目がなぜセクシーなのか、なぜアラビアンナイトにそういうイメージがついたのか、千夜一夜物語の歴史をふまえながら迫っていきたいと思います。実は、ストーリーがエロいからってだけじゃないんですよ!

 

↓次回

https://cut-bann.hatenablog.com/entry/arabian_night_adult_2