千夜一夜物語と図書館司書資格取得について語るブログ

千夜一夜物語(アラビアンナイト)と図書館司書資格勉強について投稿します。

【FGO】マンドリカルドの生涯について①

    こんにちは。絆創膏です。

 

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    今回もFGOの話。マンドリカルド、実装されましたねー。予想外どころの騒ぎじゃない。アトランティスでの彼はめちゃくちゃいいキャラしてましたが、実際どんなだったか全然覚えてない…。

    って感じだったので、狂えるオルランド引っ張り出してマンドリカルドくんが出るとこだけ読み返してみました。

    せっかくなので、メモ程度に書きます。マイフレンドの黒歴史を見ていきましょう。

 

☆マンドリカルド登場からデュランダル、ブリリアドーロを手に入れるまで

    サラセン軍(イスラム教徒軍)の勇士の紹介がなされる場面で初登場。初登場時、ヘクトールの鎧をゲットした過程を語る。狂えるオルランドだとそのくだりはカット(狂えるオルランドの前日譚である、恋するオルランドに記載があるらしい。また、ブルフィンチシャルルマーニュ伝説では、第5章フランス侵攻(一)で、妖精の試練をクリアした事による戦利品である事が書かれている)。

 

    ヘクトールの剣、デュランダルを手に入れるべく、ローランを探す。

 

    その途中、アルジェリア王の許嫁で、グラナダ王ストラディラーノの娘、ドラリーチェ姫を護衛から略奪。ドラリーチェはまんざらでもない。

    ローランと出会い、デュランダルを賭けて戦うが、馬が暴走。2人は離れ離れに。

    ローラン、マンドリカルドを探す。そこで別れた騎士ゼルビンに3日くらいならこの辺にいるから、マンドリカルドに会ったら伝えといてとお願いする。

    ローラン、マンドリカルドを探す途中でアンジェリカ(ローランが惚れてた女性)が違う男と結ばれたことを知り、発狂。鎧やデュランダルを投げ出し暴れまわる。

    ゼルビン、鎧、デュランダル、ブリリアドーロを見つける。武具一式を松の木のたもとに置き、『パラディンの騎士オルランドの物の具なるぞ』、とメモを残す。

    元の場所に戻ったマンドリカルド。木のたもとに置いてあったデュランダルを手に入れる。それは盗みに等しいとゼルビンに諭されるも、聞き入れず、戦いが始まる。

    ゼルビンの彼女、イザベラの願いで戦いは中断。デュランダルはマンドリカルドの手に。ゼルビンは受けた傷が致命傷となり死亡。

 

    ドラリーチェの許婚、アルジェリア王ロドモンテと出会い、戦闘。途中でサラセン軍の使者が現れ、シャルルマーニュ軍に攻め入られている自軍に加勢せよと伝え、戦闘中断。

    戦闘でマンドリカルドの馬は死んだが、丁度良く、その場にブリリアドーロがやって来たためそれを手に入れる。

 

 

…と、登場からデュランダル、ブリリアドーロゲットまではこんな感じです。

    過激派ヘクトールオタク。しかもオレ様系。国のためとかそういうのでなく、私利私欲のために好き放題な様はローランと良い勝負では?

    まじでゼルビンとイザベラが浮かばれねぇ。

 

    長くなりそうなので、今回はここまで。次回は、ロジェロとの一騎打ちでやられるとこまで書けたらいいな。

 

    同担拒否ヘクトール過激派限界オタク、マンドリカルドくんの明日はどっちだ?

 

【参考】ルドヴィコ・アリオスト著、脇功訳(2001)「狂えるオルランド名古屋大学出版会.

              トマス・ブルフィンチ著、市場泰男訳(2007)「シャルルマーニュ伝説」講談社学術文庫.

 

【FGO】セイバー・アストルフォの宝具「ヴルカーノ・カリゴランテ」とは

 こんにちは。絆創膏です。

 

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 FGO、クリスマスイベでセイバークラスのアストルフォが実装されるそうですね!

 シャルルやローランの前に星5アストルフォが実装されるのは予想外でしたが、正直めちゃめちゃ嬉しい。

 

 クリスマスは、前澤社長より先に、アストルフォと一緒に月旅行に行ってきます。

 

 さて、アストルフォの宝具名、「僥倖の拘引網(ヴルカーノ・カリゴランテ)」。

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 書いてる時点で実装は明日なので、詳しくは分かりませんが、ルドヴィコ・アリオストの「狂えるオルランド」の第15歌にそれらしき網が登場します。

 

 凶悪な巨人カリゴランテが、近くを通る人間を、その網を使って捕らえ、貪っていました。アストルフォは、そこには近づかないよう出会った隠者から忠告されますが、騎士の誇りから(キャラ的にそれだけではない気もしますが)、その地へと赴きます。アストルフォはカリゴランテに見つかりますが、その前に怪音を響かせる角笛(Fateでは恐慌呼び起こせし魔笛(ラ・ブラック・ルナ))を手に入れていたので、それを使ってカリゴランテの心に恐怖を呼び起こし、逃げ惑わせます(狂えるオルランドでは角笛はそのような効果を持つ)。逃げた先に、カリゴランテ自身が仕掛けた網があったため、カリゴランテはそれに絡まり、身動き1つ取れなくなりました。

 

 かなり要約していますが、大体こんな感じの内容です。

 かなりのパワーを持つはずのカリゴランテが身動き1つ取れなくなる網とは、いったいどんな網なのでしょうか。

 実は、この網は、ギリシャ神話に登場するオリュンポス十二神の1人、鍛治の神ヘパイストスがつくった網なのです。この網の捕縛力は折り紙つきで、ギリシャ神話中では、浮気した美の女神アフロディーテとその浮気相手である軍神アレスを捕らえています。神レベル(っていうか神)を捕らえるほどの網なので、いくら力自慢の巨人でも、破ることはできなかったのです。

 

 ちなみに狂えるオルランドの中では、ヘパイストスはヴルカーノと呼ばれています。ヴルカーノはウルカヌスのイタリア語で、ウルカヌスはヘパイストスと同一視されるローマ神話の神様です。

 アフロディーテ、アレスはそれぞれヴィーナス、マルスとなっています。

 

 ということで、剣アストルフォの宝具名「ヴルカーノ・カリゴランテ」は、網をつくった神の名前とそれを使った巨人の名前を組み合わせたものと思われます。

 

 次に控える第2部5章がギリシャ舞台なので、もしかしたら何か伏線が張られるかも…?(多分無い)

 

 いずれにせよ、一体、網でどんな攻撃を繰り出すのか、ワクワクが止まりません。

 

 ってかつらつら書いたけど、多分マテリアルで出るよね宝具の説明は(笑)

 

 ちなみに、アストルフォはその後、この網を手に入れています。しかし、同じ第15歌の中で、メッカで出会ったサンソネットという若者に、その地で滞在させてもらったお礼として、気前よく譲渡しています。

 こういうところが素敵ですよね、アストルフォ。

 

 

【参考】ルドヴィコ・アリオスト著、脇功訳(2001)「狂えるオルランド名古屋大学出版会.

 

【11/30追記】蛇腹剣は男(の娘)のロマン

~情報収集に使える!CiNiiだけじゃない!~国立情報学研究所(Nii)の各学術コンテンツの特徴について

 こんにちは。絆創膏です。

 

 大学図書館司書採用試験に向け勉強中ですが、電子ジャーナルや論文の検索サイトやデータベースが多すぎてわけわからん!って感じになったので、まとめてみることにしました。

 

 今回は、国立情報学研究所(NII)の検索サイト、データベースについてまとめます。

 

1.論文情報

 日本の大学等教育研究機関が対象。

 特徴は、①大学等が契約する電子ジャーナルコンテンツの安定的・継続的なアクセスの提供、②Nii-REOに搭載された各出版社の電子ジャーナル等コンテンツの横断検索が可能(大学対出版社だとそれぞれの出版社のデータベースを検索しなければならないわけだが、国立情報学研究所と協力することで横断検索が可能に)、③書誌・抄録まではフリーアクセス(本文の閲覧は出版社との購読契約が必要など。

    ちなみに搭載コンテンツについては、大学コンソーシアムと各出版社、国立情報学研究所の協議、契約により決定。

https://reo.nii.ac.jp/oja/

 

  • Nii-REO(HSS(人文社会科学系電子コレクションアーカイブシステム))

  取り扱っている内容は、人文社会科学分野における研究活動に不可欠な文書、報告書、図書等の原資料を電子化し、オンラインで利用可能としたコレクション。

  国立情報学研究所大学図書館コンソーシアムとで共同導入し、NII-REOに搭載・提供するもの。

  利用には、所属機関による契約が必要。

https://reo.nii.ac.jp/hss/

 

  • CiNii Articles

  取り扱っている内容は、学協会刊行物・大学研究紀要・国立国会図書館雑誌記事索引データベースなどの学術論文情報。

  様々なデータベースと連携することで、膨大な論文情報を検索可能。主なデータベースは国立国会図書館雑誌記事索引データベースやNDLデジタルコレクション、大学等の機関リポジトリ科学技術振興機構J-STAGE等。このため、論文本文に到達しやすい。

  検索した論文について、参考文献と被引用文献が表示されるため、引用関係をたどることが可能。

https://ci.nii.ac.jp/

 

  • CiNii Dissertations

  博士論文の情報を検索できるサービス。登録なしで利用可能。

  収録データベースはNDL ONLINE、NDLデジタルコレクション、機関リポジトリ

https://ci.nii.ac.jp/d/

 

2.機関発信情報

  日本国内の学術機関リポジトリに登録されたコンテンツのメタデータを収集し、提供するデータベース・サービス。

  提供・公開先はCiNii、NDL Search、医中誌Web等。

  ※日本国内の学術機関リポジトリに蓄積された学術情報(学術雑誌論文、学位論文、研究紀要、研究報告書等)を横断的に検索できた検索サイトである「JAIRO」は2019年3月に閉鎖し、これに統合された。機関リポジトリ環境提供サービスである「JAIRO Cloud」は健在(2019年10月現在)。

https://irdb.nii.ac.jp/

 

3.図書・雑誌情報

  • CiNii Books

  全国の大学図書館等が所蔵する本(図書や雑誌等)の情報を検索できるサービス。

  国立情報学研究所が運用する目録所在情報サービス(NACSIS-CAT)に蓄積されてきた全国の大学図書館等約1200館が所蔵する、約1,000万件(のべ1億冊以上)の本の情報や、約150万件の著者の情報を検索することが可能。

  利用登録必要なし。

  雑誌のページから各大学図書館OPACに直接リンクしているため、すぐに借りられるか等の詳細な情報を確認できる。
CiNii Articlesに本文が収録されていれば、リンクをたどり本文まで表示できる。

  元になるデータは、NACSIS-CAT/ILL(目録所在情報サービス) を通じて、全国の大学図書館等が共同作成している。

https://ci.nii.ac.jp/books/

 

4.専門学術情報

  国内の学会、研究者、図書館等が作成している様々な専門分野のデータベースを検索できるうえ、複数のデータベースを同時に検索することもできる。

  平成26年時点で、データベース数は30、レコード件数は約250万件。

https://dbr.nii.ac.jp/infolib/meta_pub/G9200001CROSS

 

5.研究情報

  • KAKEN(科学研究費助成事業データベース)

  文部科学省および日本学術振興会が実施する科学研究費助成事業により行われた研究の当初採択時のデータ(採択課題)、研究成果の概要(研究実施状況報告書、研究実績報告書、研究成果報告書概要)、研究成果報告書及び自己評価報告書を収録したデータベース。

https://kaken.nii.ac.jp/

 

 いやーいっぱいありますねぇ。ちなみに「平成29年度SINET・学術情報基盤サービス説明会」のスライドで、学術コンテンツサービスの現状が図で示されていて分かりやすかったです。

https://www.nii.ac.jp/service/upload/8_setsumeikai2017_contents_20171020.pdf

 

 個人的には、「KAKEN」で、アラビアンナイトについての本を書いている国立民族学博物館西尾哲夫教授の最新の研究が読めたことにテンション上がりました。情報収集の手段がわかると、趣味にもプラスになりそうですね。

図書館職員採用試験に向けた勉強について

 こんにちは。絆創膏です。

 

 公共・大学図書館職員の採用試験に向け、勉強を始めています。

 今日は、現在の勉強内容と今後やりたいことをお話しします。

 

★現在の勉強内容

 私が今取り組んでいるのはこちら、

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 図書館情報メディア研究会の「司書もん」です。

 全3巻出ており、公共・大学図書館の過去問の分析に基づき、頻出する分野について、問題がまとめられています。

 2014〜15の発行なので、新カリキュラムにも対応しています。

 

 一冊あたり40問となっており、毎日1問ずつ、休日や時間がある時は2問以上解くようにしています。

 このペースだと1ヶ月で1冊終わるので、3ヶ月かけて、3冊を解ききる計画となります。

 解説は、回答の仕方も含め、かなり分かりやすくまとめられています。

 

 今は1周目なので一問あたりに時間がかかってしまっていますが、2週目以降はペースを上げて行く予定です。

 

★これからやりたいこと

 第一志望は大学図書館職員なので、J-stageの「大学図書館研究」を週末に1文献読むことを習慣づけたいと考えています。

 

J-stage大学図書館研究」

https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jcul/-char/ja/

 

 大学図書館は学生時代は活用していましたが、私の学部は本校と違う場所にあり、図書館も小さいものでした。実際、図書館で働いたこともないので、職員、学生どちらの目線から見たとしても現場の知識が足りない状況です。

 それを少しでも補うためと、実際に職員になってから、自分が本当にその職場でやりたいことは何なのか、どうやったらそれが出来るのかを考えるために、これを行います。(そんなに知識ないのに、なんで大学図書館が第一志望なのかというと、どちらかというと扱う主題が学部ではっきり分かれているということと、学術的な分野を扱う図書館司書に憧れがあったから、というなんとも漠然とした理由なのです。)

 

 

 

 試験では、専門でこれらを勉強してきた人や、(私の第一志望の大学図書館は、私が通った大学よりも偏差値がかなり高いので、)私よりもずっと頭が良い人達と戦うことになります。

 また、試験をパスして採用になったとしても、周りの職員はそのような方が多いでしょう。

 少しでも差を埋めるということと、私自身が突き詰めて集中して取り組めることを探すために、コツコツと勉強していきます!

 図書館司書、図書館職員を目指して勉強している方、一緒に頑張っていきましょー!!(´ω`)ノ

図書館司書資格修了と今後について

    こんにちは。絆創膏です。

 

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    ってなわけで修了しました。

    無事1年間で取れました。

 

    これから、来年度の公共図書館大学図書館の司書採用試験に向け勉強していきます。

    来年度、現在の職場で違う資格試験を受けなければならないことになってしまったので、二兎を追う形になってます。つら。

    いろんな主題に関する知識を持つことは司書にとってもプラスになると思うので、これを乗り越えたら成長できると信じて、一段ずつ階段を登っていくしかないですね。

 

    修了証書には退学届が付いてきました。どうやら、科目等履修生という立場上、学習継続も可能なため、これを希望しない場合は退学届を提出する必要があるようです。

 

    証明書発行願も付いてきました。早速司書資格と成績を発行してもらおうと思います。

 

    先に言った通り、仕事という重りを背負いながら二兎を追ってる状況なので、更新頻度は相変わらず遅いと思いますが、ぼちぼち、司書コースで提出してきたレポートや、まだ投稿してないテストの回答についてなど、上げていきたいと思ってます。

 

    ブログ名は変えるのめんどくさいので、このままでしばらくいきます。

    拙いブログですが、これからも見ていただけたら、少しでも司書を目指す皆さんの力になれていたら嬉しいです。これからもよろしくお願いします。

セクシーなイメージが付いたのは何故「アラビアンナイトのエロティックな魅力②」

 こんにちは。絆創膏です。

 だいぶ間が空いてしまいました。

 エロティシズムから見るアラビアンナイト、2回目です。

 

 前回は、意外とアラビアンナイトは官能的な内容だということ。そして、禁欲的なイメージのあるイスラム教圏内で、どうしてそのような内容の作品が成立したのかふわっと考察してみました。

 

↓ 前回

https://cut-bann.hatenablog.com/entry/arabian_night_adult

 

 今回は、なぜ表紙や挿絵に登場する女性の服装・見た目がセクシーなのか、調べてみたのでお話しします。

 

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 バートン版アラビアンナイト7巻の表紙です。セクシーですね。

 

 表紙・挿絵に登場する女性がセクシーということは、アラビアンナイト自体にそのようなイメージが持たれている(もしくは、そう望まれている)ということになります。

 アラビアンナイトの現存する最古の文字資料は9世紀ごろのものですが、世界的に有名になるきっかけは、1704年にフランスの東洋学者であるアントワーヌ・ガランが仏訳本を発表したことでしょう。しかし、ここから暫くは好色文学というイメージではありませんでした。内容自体がエロティックという話もしましたが、実は、ガラン版はその辺は割とソフトな内容で書かれているそうです。シェヘラザードにしても、最初期の挿絵ではフランス宮廷風の衣装を着こんでいます。

 ではいつから好色なイメージが付いたのか。

 大体はバートン、そしてヨーロッパから見た中東観の変化が主な要因とされています。

 サー・リチャード・フランシス・バートン(1821~90)は、イギリスの冒険家です。この方自身についてはWikipediaでも見てください。

 バートンは1885~88年にアラビアンナイトの翻訳を発表しました。バートン版は性的な個所を強調したり、場合によっては加筆したりもされています。冒険家であったバートンは中東の風俗にも詳しく、バートン版アラビアンナイトには、かなり細かく注釈が付けられています。特に性風俗関係については、より細かい印象を受けます。

 現在でも読まれている翻訳本の中でもメジャーなバートン版ですが、このような好色文学が目を引いたというだけでなく、当時のアラビアンナイトとして知られていた話のほとんどが内容に含まれていたということがその理由として大きいようです。アラビア語写本の中で、ヨーロッパでは最もメジャーなカルカッタ第2版を底本としている上、これに入っていない物語も6巻から成る補遺に収録しています。

 また、ヨーロッパの東方趣味(オリエンタリズム)は18世紀ごろから盛んになっていましたが、19世紀には新しい段階に入りました。ナポレオンのエジプト遠征などにより、それまで幻想の世界でしかなかった東方が一挙に現実的なものとなったのです。その結果、東方のハーレムやその性的開放への憧れから、オリエンタリズムはリアリズムとファンタジーに二重化し、むしろ幻想は強まりました。バートン版は19世紀後半の作品ですので、ちょうどこの頃の民衆の熱と合致したのかもしれません。 

 

 このようにバートン版の出版とそのブーム、ヨーロッパの中東観の変化などから、アラビアンナイトは好色的なイメージを持たれたとされています(諸説あるかもしれませんが)。

 

 上述のようにバートン版は好色的な面が強調されていますが、翻訳した人や対象者(児童文学か大人向けか、など)によって、だいぶ中身の印象は変わってきます。それに応じてか、シェヘラザードが描かれた挿絵も良妻賢母なイメージや好色、純真無垢に描かれたものなど、画家により様々だったりします。

 

 日本では、現在手に入りやすい和訳が2つとも(バートン版とマルドリュス版)好色系というのも、セクシーなイメージを助長しているかもしれません。ヨーロッパでは、あらかた有名どころの訳が出そろった20世紀に入ってからは好色文学のイメージが強くなっていたということですし、現在でもアラビアンナイトの世界観を逆輸入し、観光に役立てている中東ドバイで、観光客向けにベリーダンスを披露するレストランがあるなどということを踏まえると、海外でも同じようにセクシーなイメージを持たれていそうです。デ〇ズニーの「アラジン」のジャスミン姫のコスチュームもセクシーですしね。1923年にロデリック・マックリーによって描かれたシェヘラザードはほぼ全裸で、好色ここに極まれりといった感じです(不夜キャスさんがえっちな服装なのもうなずける…)。

 

 ヨーロッパの中東に対するイメージという点では、1875年にウォルター・クレインが描いたアラジンの服装はどこか中国感のあるものとなっています。19世紀に入り東方世界が近しいものになったとは言っても、案外細かいところまでは認識していなかったようです。

 

 ドバイのベリーダンスに触れたので、少し気になって調べてみましたが、ベリーダンスは紀元前からのエジプトの伝統芸能みたいです。イスラム原理主義者からはよく思われていないようですが、一般的なイスラム教徒からは黙認されているようです。ただ、結婚式のような特別な場限定で黙認されているらしいので、やっぱり基本的にはあのような格好で不特定多数の前で踊るというのはNGなんですね。

 

 千夜一夜物語イスラム教徒の方達が多く出てくるので、日本人では理解し難い価値観や行動も、イスラムの価値観を勉強すれば、理由が見えてきそう。ひとまずはコーランを知るために何か読んでみようかな。

 

★参考文献

 西尾哲夫 著(2007)「アラビアンナイトー文明のはざまに生まれた物語」岩波新書

 海野弘 解説・監修(2016)「オリエンタル・ファンタジー アラビアンナイトのおとぎ話ときらめく装飾の世界」(株)パイ インターナショナル

HSP(ハイリ―センシティブパーソン)と向き合う①~意外と多い「とても敏感な人たち」~

 こんにちは。絆創膏です。

 

 本日は閑話休題千夜一夜物語や図書館司書から離れ、読書の感想を述べます。

 こんな感じで、たまに千夜一夜物語や図書館司書以外のことも話していきたいと思います。

 

 さて、みなさんは、HSPという言葉を聞いたことがありますか?

 Highly Sensitive Person。日本語にすると「とても敏感な人」となります。

 

 HSPは、その特徴として、外部からの刺激を受けすぎるため、そうでない人と比べ、疲れやすかったり、心の問題を抱えやすかったりします。

 

 私も人と長時間一緒にいると気力がなくなり、スリープモードに入ったかのように黙り込んでしまうということが多々あり、もしかしたらこれに近いものなのではないかと感じ、HSPについて書かれた「鈍感な世界に生きる敏感な人たち」(イルセ・サン著、枇谷玲子訳 Discover)、「「繊細さん」の本」(武田友紀著 飛鳥新社)を読んでみました。これらの本を読み、HSPとはそもそも何なのかということや、HSPが精神的に楽に生きるにはどうしたらよいか学ぶことができました。今回から2回にわたり、気になった部分を抜き出しつつ、私見を交えて感想を述べていきたいと思います。

 

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「鈍感な世界に生きる敏感な人たち」

(折り目が気になる…)

 

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「「繊細さん」の本」

 

※本の内容を網羅している訳ではないですし、自分自身の主観や感想も入っていますので、気になった方は、原本をご一読いただくことをおすすめします。

 

HSPとは

 今回はHSPとはどのような人を指すのかについてお話します。こちらは、「鈍感な世界に生きる敏感な人たち」からの内容です。この本は、HSPとはそもそも何なのかということについて、過去の研究結果に基づく内容を交えて学術的に書かれています(鈍感な世界で生きる対処法など、他の項目については、心理療法士である著者が診察した相談者の経験から書かれていることがメインとなっています。)。

 HSP(Highly Sensitive Person)は生まれ持った「気質」です。先天的なもので、病気ではありません。1996年、アメリカの心理学者エレイン・アーロンによって提唱されました。

 ネガティブなワードでHSPを表現すると、「抑圧されている」「心配性」「シャイ」「神経症」などとなります。そうでない人と比べ、外部からの刺激を受けやすい、つまりは「敏感」や「繊細」な人のことを指します。今のいけいけどんどんな外向的傾向がもてはやされる風潮の中では、生きにくい傾向にあるようです(外交的なHSPも30%はいるが、その人たちも内向的な人と一致した特徴が多くあるようです)。

 しかし、ただ敏感なだけではありません。アーロン氏は、HSPは様々な特徴が複雑に合わさった人たちであると述べています。それらは例えば、「良心的」「創造的」「インスピレーションを得やすい」「影響を受けやすい」「感情移入しやすい」などです。そしてこれらの特徴が、ストレスフルな状況ではマイナスに働くが、適切(平穏)な環境下では、そうでない人と比べ、幸福を感じやすいということがわかっています。

 HSPの人口に占める割合は15~20%、5人に1人という同氏の研究結果が出ています。意外と多いですね。ちなみに人間だけでなく、他の高等動物にも同じ気質を持つ個体は見られるそうです。

 

 5人に1人もいるなら、職場や学校でも同じ悩みをもつ仲間がいるかもしれません。同じ悩みを持つ人と悩みを共有すると、ストレスレベルを下げることができるという南カリフォルニア大学の研究結果もあるそうですので、似たにおいを感じた相手がいたら、悩みを相談してみても良いかもしれませんね。

 

 さて、次回は「「繊細さん」の本」より、HSPが精神的にラクになるためにはどうしたらよいかお話します。日本人著者による本ですので、日本人にとって取り入れやすいHSPのためのテクニックが散りばめられた内容となっております。その中から、特に気になった点をピックアップし、私が感じたことも交えながらお伝えしたいと思います。

 

↓第2回

https://cut-bann.hatenablog.com/entry/hsp_sensai_san