千夜一夜物語あらすじ「語り手の彼女、真の結末は…?」
こんにちは。
絆創膏です。
千夜一夜物語(アラビアンナイト)は、サーサーン朝ペルシャで、シェヘラザードがシャフリヤール王に毎夜、物語を語る物語を最外殻とした、入れ子構造のお話です。物語の中に物語が入っているといった形で、「シェヘラザードが語る物語の中の登場人物がさらに物語を語る」といったことも多く見られます。
物語がゲシュタルト崩壊しそう。
今回は、千夜一夜物語の最外殻である「シャフリヤール王とシェヘラザードのお話」のあらすじとその結末についてお話しします。
☆あらすじ
シャフリヤール王は、妃が奴隷と不倫しているのを目撃、女性不信となり、「毎晩処女と夜を共にしては翌日処刑する」ことを繰り返すようになります。
シェヘラザードは、王に仕えている大臣の娘であり、処女を見つけてくるよう命令され疲れ切っている父のため、王の凶行を止めようと夜の相手に立候補します。
一通り夜の営みが終わった後、前もって準備していた通り、妹のドニアザードから「お姉さまのお話を聞かせてください」とせがまれたシェヘラザードは、王に物語を語りはじめます。
その話が面白く、続きが気になった王は処刑を1日延期します。シェヘラザードは、ある日は話が面白くなってきたところで切り、ある日は「明日のお話はもっと面白いお話ですよ」と期待を煽り、処刑を1日、また1日と伸ばしていきます。
これが千と一夜繰り返され、その後、王は改心し、シェヘラザードは妃に迎えられ、めでたしめでたし…。
…というのが最外殻であるシャフリヤール王とシェヘラザードのお話の大雑把なあらすじです。
基本的にはこの通りなのですが、千夜一夜物語は1人の作者が著したものではないため、元になった写本も複数あったり、翻訳者が勝手に話を盛ったり付け加えたりして、「これが正解」というものがありません(「これがメジャー」というものはあるが)。つまり結末も写本によって微妙に異なっています。
シェヘラザードはいったい千一夜の後、どうなったのでしょうか…。
☆シェヘラザードの結末
①プルクシュタールが入手したエジプト系写本(ヨーロッパ人(プルクシュタール)が初めて見た、「結末が記載されている写本」)
千一夜目に、王はシェヘラザードの物語に飽きてしまいます。彼女を処刑しようとすると、彼女は王との間にできた3人の王子を連れてきて命乞いをしました。
②アントワーヌ・ガランが仏訳した底本
千一夜目に、王はシェヘラザードの知恵と勇気に感じ入って処刑を取りやめました。
つまり、①と違って王子も生まれていなければ、命乞いもしていません。
③カルカッタ第二版(ヨーロッパでは最も完成されたとされているアラビア語写本、日本で読まれているものの多くはこれをヨーロッパで訳したものを和訳したものか、そのまま和訳したもの)
千一夜目に、シェヘラザードは唐突に3人の王子を伴い、命乞いをしました。
最終的に助かるのは同様のようですが、そこまでのプロセスは物によって結構違っているようです。
★ここからは私見
千夜一夜物語の成立過程については、次回以降にまとめようかと思っていますが、元々核の部分は二百数十夜しかなかったとのことですので、これらの結末も後から付け加えられたものである可能性が高いです。
千夜一夜物語の中で語られる話は結構残酷で救いのないものもありますが、シェヘラザードの話についてはこぞってハッピーエンドで締められているところを見ると、彼女はアラビアンナイトの成立に関わった人々の多くに愛されていたのかもしれません。
物語の力で暴君を更生させる女性。中東のジャンヌダルクとでも呼ぶべき存在なのではないでしょうか。
しかし、3人も子供産んでて気づいてない王様、大丈夫か?
次回は、千夜一夜物語の成立の過程についてまとめる予定です。
よろしくお願いします。
【参考文献】西尾哲夫(2007)「アラビアンナイトー文明のはざまに生まれた物語」岩波新書.
西尾哲夫(2014)「図説 アラビアンナイト」河出書房新社.