禁じられたものほど欲しくなる「アラビアンナイトのエロティックな魅力①」
こんにちは。絆創膏です。
まずはこちらをご覧ください。
………うん、セクシー!
バートン版千夜一夜物語一巻の表紙です。
全11巻ですが、ほぼ全ての表紙に扇情的な姿やポーズをした女性が描かれています。エロティックさだけでなく、美しさも感じる絵ではありますが、児童文学やディ◯ニーのイメージが強い方が見たらびっくりしますよね。しかも中の挿絵も大体こんな感じです。
誤解を恐れずに言えば、千夜一夜物語は官能小説もかくや、というくらいのアダルトな物語なんです。
美しい愛や燃え盛る情熱の元に男女が交わる様を描くものもありますが、ただ色情の元に淫靡な行為に耽ったり、乱交や、当時は御法度だった同性愛、現代でもあまり好ましくない近親相姦など、その内容も多種多様です。そもそも最初が妃の不倫と大乱交から始まりますしね。
イスラム教の聖典であるコーランでは婚前交渉は禁じられています。それに、女性は外に出る際は、頭まで含め肌を隠さなければなりません(度合いは場所によって違うようです)。
つまり、千夜一夜物語で繰り広げられるような痴態は、現実の中東ではまずありえないと言えるでしょう。
ではなぜ千夜一夜物語ではこのような淫靡な行為が描かれているのでしょうか。考察してみます。
我々日本人と比較して、イスラム教徒はかなり禁欲的な生活をしています。酒は基本NGですし、断食もあります。断食中は、妻(夫)との日中の性交渉も禁じられています(もちろん夫婦間でない性交渉はご法度)。
加えて断食中でなくとも、女性はほぼ全身を隠して見えない状態になっています。かなり性的衝動を抑圧しているのではないかと予想されます。つまり、千夜一夜物語の官能的な内容は、当時のイスラム教徒の性的衝動のはけ口ではないかと思うのです。
現実ではその衝動を発散させることができないため、物語にそれを求めたのではないでしょうか。しかも直接的に官能的な内容だけでなく、近親相姦など、明らかにアウトな話もあります。
しかし、近親相姦の話は、お互いが兄妹だとしらずに事を成し、子を成すのです。コーランによれば、唯一神アラーは、無知による失敗については、その後悔い改めて誠実にアラーに尽くせば罰を与えることはしないといった寛容な神様であるようですので、もしかしたら、このお話の作者もストレートに近親相姦をネタにするのは畏れ多く、聖典をかいくぐるためにからめ手を使ったのかもしれません。
ちなみに、近親相姦があるお話は、バートン版では「オマル・ビン・アル・ヌウマン王とふたりの息子シャルルカンとザウ・アル・マカンの物語(第45夜‐第146夜)」となります。
近親相姦までのあらすじは以下の通りです。
ある時代のバグダードにオマル・アル・ネマーン王がいた。いくさに強く、版図を遠くひろげ、内には寛仁大度をみせて尊敬をあつめる名君である。オマル王にはひとりだけ息子がおり、王子シャールカーンは武芸に秀でた勇敢な男であった。だがその後、オマル王の側室サフィーアが懐妊し、男女の双子を産む。最初に生まれた女の子はノーズハトゥザマーン、次に生まれた男の子はダウールマカーンと名づけられた。男の子が生まれた場合、将来の王位争いを避けるため殺してしまおうと考えていたシャールカーンだが、最初に女の子が生まれた時点の報告しか聞いていなかったため、男の子の存在を知らない。
ある日、ルーム(ローマ)とコンスタンティニアの王アフリドニオスの使者が来て、カイサリア王ハルドビオスとの戦争に同盟を持ちかけてくる。ある族長がアフリドニオスに献上しようとした数々の霊験をうちに秘めた三つの宝玉を、カイサリア軍が横取りしてしまったため何度か攻め込んだのだが、歯がたたないというのだ。大宰相ダンダーンとシャールカーンが兵を率いて派遣された。
軍はある谷で大休止をとるが、ひとり地形偵察に出たシャールカーンは、キリスト教の僧院で相撲をとっている美しい白人の乙女とそれにかしづく美女奴隷たちを見る。欲情したシャールカーンは剣をとって乱入し、我のものになり一緒に来るよう要求するが、乙女は承知しない。乙女に恋してしまっていたシャールカーンは、せめて歓待を受けさせてくれと申し入れ、乙女は彼を僧院へいざなった。
次の日目覚めると、乙女はシャールカーンの正体を知っていた。彼はその日から数日間歓待を受ける。歓待を受けている途中、カイサリアの貴族マスーラの軍が押しよせてきてシャールカーンを出せと要求。乙女はハルドビオス王の娘、アブリザ女王だった。アブリザはシャールカーンをかばって別人だというが、マスーラは是が非でも引き連れていくと言って聞かない。それなれば、一人対百人の兵ではなく、順番に一対一で戦って勝ったならば連行せよ、とアブリザは命じた。シャールカーンがすべての兵を撃退すると、アブリザは、自分は折り合いの悪い老婆「災厄の母」によって回教徒に与したとされるだろう、ここから立ち去るのを手助けしてくれと言う。そしてこの戦争が罠であることを明かす。
実はサフィーアはアフリドニオス王の娘であった。ある祭りの帰途、サフィーアが乗る船が多くの美女たちとともに海賊に鹵獲され、カイサリア軍が海賊を駆逐してサフィーアたちをハルドビオス王に献上し、ハルドビオス王はそれをまたオマル王に贈ったのである。アフリドニオス王はそれを知ると、ハルドビオス王と協力してオマル王に復讐しようとしたのだ。ただし宝玉は実際に存在し、アブリザが所有している。それを知るとシャールカーンは自軍にもどり、兵をまとめて帰還させる。殿軍をつとめるシャールカーンに手強い騎兵が追いすがるが、それは後を追ってきたアブリザだった。彼らは連れだってバグダードに入る。
報告を受けたオマル王は、献上された宝玉を三人の子にわけあたえる。ここで初めてダウールマカーンの存在を知り、また、オマル王にアブリザへの欲望を見たシャールカーンは、ひどいショックを受けてしまった。
再三アブリザをくどくオマル王だが、アブリザは拒否しつづける。そこでオマルは麻酔薬をもちい、アブリザが寝ているうちに処女を奪ってしまった。アブリザは懐妊し、やがて臨月になると、忠実な奴隷女と屈強の黒人奴隷をひとりずつ伴い、故国をめざして出奔する。道中欲情した黒人奴隷はアブリザに襲いかかり、彼女が自由にならないと知るとこれを殺し、姿をくらます。最後の息で男の子を産みおとすと、そこにハルドビオス王が現れ、子を国へ連れかえった。ハルドビオス王は復讐を誓い、災厄の母の進言を聞いて、オマル王を閨房から罠にかけるため、美女をあつめてアラビア式の教育をほどこしはじめる。一方、アブリザがいなくなったことを知ったシャールカーンはいたく傷心し、父王に頼んでダマスの太守に任命してもらい、宮殿を出た。
十四歳になっていたダウールマカーンは、姉ノーズハトゥをさそって父王に内緒で巡礼に出る。しかし途中で熱病にかかり、治療のために金もつきてしまった。働きにいくといって出て行ったノーズハトゥはそのまま姿を消し、漂白したダウールマカーンは、ある風呂焚きにひろわれる。回復したダウールマカーンは風呂焚き夫婦を従者にして帰国の途につく。ダマスにつくと風呂焚きの妻が熱病で病死するが、ひきつづきバクダードに向かうことにする。
一方、ノーズハトゥはベドウィン人に誘拐され、ダマスの奴隷市場で売りに出されていた。ふっかけるベドウィン人に対し、ある商人が十万ディナールの値をつける。ノーズハトゥがあらゆる学問に通暁していることを知ると、商人は喜び、彼女をシャールカーンに献上する。シャールカーンはノーズハトゥを解放し妻とすることを宣言。学問を示せというシャールカーンに対し、ノーズハトゥは「三つの門についての言葉」を物語る。
人生の目的とは熱誠を発達させることであり、その道には三つの門がある。第一の門は「処世術」、第二の門は「行儀」と「修養」、第三の門は「徳の門」。
ノーズハトゥは博覧強記を発揮し、古今の逸話をひいて熱弁をふるう。聞いていた一同は感激し、そのまま婚礼をとりおこなう。ノーズハトゥはたちまち懐妊し、喜んだシャールカーンはオマル王へ書簡で報告する。
父王からの返書で双子が失踪したことを知ったシャールカーンは、娘を産みおとしたばかりの妻に報告しようとする。すると、赤子の首に宝玉が吊るされていることに気づいた。驚いて聞くと、妻は自分がオマル王の娘であることを明かす。シャールカーンもまた、自分が王子であることを告白する。なんと、兄妹が互いにそれと知らず、結婚してしまっていたのだ!これをかくすため、一度も同衾することなく離別して侍従長と結婚させたということにし、「運命の力」と名づけた娘をそこで養育させることにした。
オマル王から第二の飛脚がとどいた。老女に率いられた学識豊かな五人の乙女がルームからきており、これを購入するためにシャーム地方の年貢一年分が必要である。年貢をバクダードに送り届け、ついでに教養があるという汝の妻を当方に派せ、という。ノーズハトゥが侍従長とともに父のもとに向かい、事情を説明することにした。そのあいだ運命の力は、ダマスで大切に育てることになる。
ダウールマカーンがダマスを発ったのは同じ日のことで、隊列のあとについて旅をし、やがてバクダードにほど近い地で野営する。懐かしさに詩をうたうダウールマカーンの声に気づいたノーズハトゥは、宦官に命じて三度まで歌った男を探させる。姉弟は再会を果たし、互いにこれまでのことを告白する。このとき侍従長ははじめて自分の妻が王女であることを知った。
さらにバクダードに向かう一行の前に大軍があらわれた。これを率いる大宰相ダンダーンによると、オマル王は殺されたのだという。跡継ぎはシャールカーンと決まり、自分は迎えにゆく途中なのであるが、都にはダウールマカーンを推す勢力ものこっているらしい。侍従長がダンダーンに事情を説明すると、緊急会議がひらかれ、ダウールマカーンを新王に迎えることになる。王座につくと、ダウールマカーン王は父の死の事情をダンダーンに問うた。……
(引用 千夜一夜物語のあらすじ - Wikipedia )
長いのであらすじはここまで。気になる方は、Wikiか原作を読んでください。
このように、千夜一夜物語はあの手この手で聖典の啓示をかいくぐり、様々なアダルティックカテゴリーを楽しめるようになっています。
性にはかなり厳格なイメージのあるイスラム教ですが、表現規制みたいのはなかったんですかね?日本も少し前まで漫画・アニメの表現規制が云々って話出ていましたけど、今どうなってるんだろう…?
ということで今回は、ストーリーの面からアラビアンナイトのエロティックな魅力について考察してみました。
次回は、表紙や挿絵に登場する女性の服装・見た目がなぜセクシーなのか、なぜアラビアンナイトにそういうイメージがついたのか、千夜一夜物語の歴史をふまえながら迫っていきたいと思います。実は、ストーリーがエロいからってだけじゃないんですよ!
↓次回
【合格】図書館制度・経営論 web試験「専門的・非専門的職員と図書館の向うべき方向」
こんにちは。絆創膏です。
1か月遅れですが、2019年6月期の図書館制度・経営論web試験を受験しましたので、その内容についてお話します。
来ましたね!自分の意見を述べる系のやつ!!しかもテキストの内容も問われたうえで!!!
まるまる自分の考えとか、私見なしでテキストから該当箇所抜き出すとかと比べて難易度やたら高く感じます。
☆問題
図書館の非専門的職員が行う業務と専門的職員が行う業務をそれぞれ羅列し、図書館の向うべき方向は本来どうあるべきか、貴方自身の考え方を含め記せ。
☆回答
業務を羅列せよーのところは、テキスト128ページ以降の各業務を要約しながら、ひたすらかきなぐりました。
図書館の向うべき方向については、人材・予算不足等の面もあり、専門的職員、非専門的職員のどちらをも正規職員として雇うのは難しいという現状の中、地域の情報センターとしての側面が求められており、専門性を持った職員を育てなければならないという状況であるため、「専門的職員は正規職員として雇い、非専門的業務については、外部委託とする方向」を提案しました。
専門的職員を正規職員としなければいけないと考えた理由は、
①情報センターとして機能するためには、各分野に精通した専門家が必要である
②その専門性を高めるためには、多くの勉強や経験を要するが、これを非正規としてしまうと、契約年数等による将来への不安や正規職員になれる他分野への興味などにより、専門的な知識を学ぶことへのモチベーションが下がってしまう。
③仮に専門性が高まったとしても、非正規の場合、いつまでその図書館で業務に貢献してくれるかわからない。
といったところです。
もし、これが難しいということであれば、必要に応じて専門的な人手不足に悩む各図書館に職員が派遣されるような、「複数の図書館の専門的業務を担う機関」を設立することも考えられるのではないか。
という感じで〆ました。
★感想
やー、難しいよ。うん。難しい。図書館で働いたことがあるわけではないので、正規と非正規、専門と非専門の住み分けとか正直よくわかってない。
そんな中で、テキスト読んだり、近くの図書館見て思ったことをとりあえず書いてみたって感じです。現場知ってる人からしたら、あさっての方向に突っ走ってんなこいつって思われそう(笑)
★結果
75点 合格
一安心。よかったよかった。
私ははやく現場を知りたい。
千夜一夜物語入門にオススメの一冊
こんにちは。絆創膏です。
千夜一夜物語、興味あっても話が長大すぎるし、どこから手をつけたものかって感じなんですよね。千一夜分って1日1夜でも約3年ですからね。絶対途中で飽きる。中東の迷信でも「アラビアンナイトを読み終えようとする人は途中で死ぬ」というのがあるらしいですよ。
読み終える前に死ぬ程ではないにしても、成立の過程からこれだけ入り組んでいる物語、どこから入るのが正解なのか。
正解なんてものはないのでしょうが、私が初めに読んだものを、千夜一夜物語入門にオススメの一冊として、紹介させていただきます。
☆大場正史訳 バートン版アラビアンナイト 千夜一夜物語拾遺(角川文庫)
私が初めてちゃんと読んだアラビアンナイトで、バートン版の拾遺(本編ではなく、補遺から選抜されたもの)となります。
中身としては、アラビアンナイトお馴染みの「アラジン」や「アリババ」等、全10話が収められています。
350ページほどと、良心的なページ数であるのに加え、豊富で分かりやすい注釈のおかげで、楽しめながらさくさく読めます。
案外、アラジンやアリババというキャラクター名は知っていても、内容はよく知らないという人も多いのではないでしょうか。私も実際よく知らなかったのですが、古典文学の和訳とは思えないくらい読みやすい文章だったのもあり、すっかり作品に魅了されました。
詳しい内容については、ネタバレになるのでこの記事の中では話しませんが、きっと日本人の価値観で読むと、色々びっくりすると思いますよ。
オススメです(´ω`)
★蛇足
今回紹介したバートン版アラビアンナイト拾遺は、新宿紀伊國屋のFateフェアの時に購入しました。
何を隠そう、Fateシリーズ大好きなんです。
1番好きなのはライダーさんもといメドゥーサさん。ギリシャ神話もたまに読みます。とはいえ、メドゥーサさんが絡む話ってあんまりないですよね。書籍がなければ、論文あるかなーっと探してもあまり見つからず。どなたかメドゥーサさん絡みの何かしらあったら教えてください(土下座)。
あ、もちろん、不夜キャスさんも大好きですよ!!ライダーさん一強の絆創膏好みヒエラルキーに颯爽と現れた不夜キャスさん。当カルデアの二枚看板です。次いでアストルフォ。シャルルマーニュ関連はトマス・ブルフィンチ版が読みやすくてオススメですよ!ってかそれ以外ほぼ入手困難…。そのうち、シャルルマーニュ伝説の感想も語りたい!
話戻りますが、当時は真名隠しがあったので、紀伊國屋さんも配慮してますね。むしろ、このカバーだけでも価格以上の価値があるのでは、というくらい可愛いカバーでお気に入りです。
またやってくれないかなーFateフェア。
【合格】図書館情報技術論 web試験「ウェプページ閲覧の為の技術」
こんにちは。絆創膏です。
図書館情報技術論の2019年6月期ウェブ試験を受けました。科目終末試験から問題が出たのですが、え、これ出すの?って感じの問題が出てびっくりでした。
☆問題
ウェブページを閲覧するための4つの技術について説明してください
☆回答
テキスト40〜41ページに書かれていることをほぼそのまま書き写しました。HTMLの説明の際に、41ページの「b.HTMLとリンク」から、マークアップ言語について簡単に説明を入れたくらいで、本当にほぼそのままテキストに書かれている内容を書きました。
★感想
図書館情報技術論は、問題集の11番以降は結構自分で考えさせる問題が多かったりして、どんな問題が出題されるのか戦々恐々としていたので、逆にパニクりました。
自分の考え求められてるわけでもなければ、テキストのある部分とある部分を組み合わせて答える、みたいな問題でもないので、テキストの内容ほぼそのまま書き写したわけなんですが大丈夫かなー…
逆にこれで落ちてたら、どう答えろと?って感じだし、大丈夫だよな…?
試験勉強は、テキストだけで事足りる感じでした。というか、他の教科だと役に立つような、JLAやライブラリーシリーズがほぼ役に立ちません(問題集の問題に関してはですが)。
私の場合は、問題集に沿いながら、テキストの何ページに何が書いてあるか確認したり、簡単に箇条書きで答えを作って試験に備えました。
図書館情報技術論に限った話ではありませんが、どんな問題が来てもすぐに参考箇所を開けるように、ウェブ試験対策では、どこに何が書いてあるかを把握しておくことをオススメします。
★追記
95点でした。
テキストの問題に該当する部分をしっかり書ければ大丈夫なようですね。
千夜一夜物語の発端と大ブームの火付け役「思い込みによって紡がれた千と一の夜」
こんにちは。
絆創膏です。
千夜一夜物語の発祥はもちろん中東とされていますが、現在、これ程までの知名度を得ている理由は、意外にもヨーロッパにあるようです。
今回は、千夜一夜物語の発端や、千夜一夜物語をヨーロッパに広めたあるフランス人についてお話しします。
☆千夜一夜物語の発端
現存する千夜一夜物語最古の文字資料は9世紀のもので、パピルスではなく、紙に書かれたものの一部が残っています。
後述するアントワーヌ・ガランが翻訳に使用した写本(現存する千夜一夜物語写本として最古)が、千夜一夜物語の初期形態に最も近いとされていますが、中東での千夜一夜物語成立史はほぼ分かっていないのが現状です。
アッバース朝時代に「アルフ・ライラ(千の夜)」という物語集が存在しており、おそらくはインドやペルシャに起源を持つ物語がアラビア語訳されたもので、これが千夜一夜物語の核となったのではないかとも言われています。
☆千夜一夜物語の火付け役、アントワーヌ・ガラン
アントワーヌ・ガランは、ルイ14世の時代の東洋学者です。ガランが1704年に千夜一夜物語をアラビア語から仏語に翻訳し、出版したところ、フランス宮廷で大ブームとなりました。フランス宮廷は当時のヨーロッパ文化をリードしていた存在でしたから、このブームはヨーロッパ中に広まっていったわけです。
ここから約150年後に発表されたアレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯(巌窟王)』で、主人公の偽名として「船乗りシンドバッド」という名前が出てきます。わずか150年で、ヨーロッパではシンドバッドという名前が一般的なものとなったようです。
ガランは、千夜一夜物語を翻訳する以前に、シンドバッドの翻訳を行なっていました。完成原稿を印刷業者に渡した際、千夜一夜物語という物語集の存在を知るのですが、なぜか、シンドバッドの話はその一部であると思い込んでしまいます。千夜一夜物語の写本を入手したガランは、それらを翻訳した2巻を出版。シンドバッドの話はその後、千夜一夜物語の3巻として出版されました。
実はシンドバッドの話は、現在では千夜一夜物語の一部ではないという見方が有力です。千夜一夜物語にあるはずの夜の区切りもありません。そこでガランは、勝手に夜の区切りをシンドバッドの話にも入れてしまったのです。
また、シンドバッドが物語集の一部であるということだけでなく、もう一つ、ガランは誤解をしていました。千夜一夜物語は本当に千一夜あるということです。ガラン写本と呼ばれる、ガランが翻訳した写本は282夜分しかありませんでしたが、千夜一夜と言うからには千一夜に渡る物語があるのだろうと思い込んでしまったのです。
アラブ世界での千一という数は、「多数の」という意味があるようです。日本語の「五万とある」のようなものでしょうか。「巨万とある」とも書くようですが。まぁ「万」って入ってるし同じようなものか(適当)。
すなわち、「たくさんの物語が含まれている」という意味で「千夜一夜」物語なのではないかと現在では言われています。
しかし、千一夜分の話を記した写本があると確信していたガランは、その写本探しを始めます。しかし中々見つかりません。ガランは、シリアのアレッポ出身のキリスト教徒、ハンナ・ディヤーブから口述で物語を聞き取ります。これらも物語の中に含め、明らかに当初手に入れた写本よりも長い物語をガランは執筆したのでした。
また、「アラジン」「アリババ」や魔法の絨毯が登場する「アフメッド王子と妖精バヌー」といった、現在でもメジャーな物語がガラン版には含まれますが、これは元の写本にあったものではなく、今では本来の、大元になったアラビアンナイトには含まれていないという説が一般的です。
ガランがヨーロッパに千夜一夜物語を紹介したことで、ヨーロッパでは、完全な千夜一夜物語の写本、ガラン版の続きとなる写本があるのではないかという先入観が生まれ、様々な人がまだ見ぬ写本を求めました。
今日、私たちが読んでいる本当に千一の夜に渡る「千夜一夜物語」は、このアントワーヌ・ガランがヨーロッパに送り出した「千夜一夜物語」によって、長い時間をかけて多くの人々が紡いできた物語なのです。
☆感想
ガランさん、結構自由な人というか、今だったら炎上しそうなこと平気でやりまくってますね。
写本の物語をかなりいじくったりもしてたみたいですし、シンドバッドの話に勝手に夜の区切り加えて、しかもそれについての説明はなかったようです。この時代だとよくある事だったんですかね…?
とはいえ、ガランさんがこのようにめちゃくちゃやってくれなかったら、今この世にアラジンやアリババ、シンドバッドは知られていないかもしれません。ある意味、今の千夜一夜物語の原著者と言ってもいいのかもしれませんね。
【参考文献】西尾哲夫(2007)「アラビアンナイトー文明のはざまに生まれた物語」岩波新書.
ロバート・アーウィン著,西尾哲夫 訳(1998)「必携アラビアン・ナイト物語の迷宮へ」平凡社.
【合格】情報サービス論 web試験 「利用教育のための環境整備」
こんにちは。絆創膏です。
今回は、先週受けた情報サービス論のweb試験の内容と私の回答についてお話しします。
正解かどうかもわからないですし、基本丸パクリはNGですので、あくまで参考までにどうぞ。
☆問題
利用教育実施に必要な環境整備にはどのようなものがあるか。簡潔に記すとともに、さらに充実させるには何が必要か、あなた自身の考えを含め述べよ。
☆回答
この問題は大きく2つの部分に分けられます。
①利用教育に必要な環境整備にはどのようなものがあるか。
…おそらく、教科書の内容をどれだけ理解しているか見るもの。答えがある。
②利用教育をさらに充実させるために何が必要か。
…おそらく、①の内容を踏まえた上で、回答者が環境整備に対してどのような考えを持っているか見るもの。確定した答えはない。
上述の「①②それぞれの答えに求められていそうな点」をふまえ、①は、教科書の内容79〜81ページ((1)組織的に行う〜(8)その他)を要約して書きました。あまり私見を入れないよう、教科書に忠実に要約するよう気をつけました。
②は、①の回答とは違う視点から、自身の意見を述べることを意識しました。
結論:利用教育をホームページやSNSを用いて行う
理由:最近の生徒、学生はスマートフォン等、情報伝達ツールを所持していることが一般化している。利用者が利用しやすい環境に合わせた方が、教育の効率が良い。
※情報サービス論は大学図書館の話がメインであることから、対象を若めに設定して話をしました。
具体的内容:ホームページに利用教育のための動画を貼り付ける。それをSNSでPRする。もしくは、動画を短く編集し、SNSでアップする。
メリット:利用教育についてだけでなく、サービスやイベントについてもSNSで発信することで、図書館自体に興味を持ってもらえる。興味を持った人は、能動的に図書館を利用しようとするだろうし、SNSやホームページですでに動画を見ているため、結果的に利用教育がスムーズに進むと思われる。
また、ネットの便利なところとして、投稿の時間指定や自動化ができるため、従来の利用教育と並行して実施することができる。もしくは、完全に利用教育の手段をネットに切り替えることができれば、その分の労働力を利用教育の先にある情報サービスに割くことができる。
デメリット:ネットで利用教育の項目を見つけられなかった場合、利用教育を受けることができない。
対策:入学時のオリエンテーション等の際に利用教育について、SNS上で発信していることを周知する。「図書館利用の際はこれを見ればいい」というものを提示することで、利用者は安心感を得るし、情報格差の是正につながる。
★感想
合格してればいいですが…。自分の意見はしっかりかけたと思いますが、はたしてこれが現場で使えて、ちゃんと結果が出るものなのかはわかりません。先生のお眼鏡にかなうかどうか。
とはいえ、現時点で自分が書けるだけのことは書いたので悔いはないです。後は結果を待つのみ!!
6月20日追記
結果 100点
まじで!?やったー!100点やったー!!
こんなことあるんだなぁ。かなり気前の良い先生なのかな。なんにせよ一安心です。
【合格】児童サービス論 web試験 「子どもの読書離れ」
こんにちは。絆創膏です。
近畿大学通信教育部で図書館司書資格を取るため勉強中です。気が向いた時に、この関係も投稿しようと思います。
本日、図書館司書資格、児童サービス論の科目終末試験(ウェブ試験)を受験しました。
問題と私の回答について、大まかな内容を書きます。
合格してるかもわからないですが、参考になれば幸いです。
☆問題
『子供の読書離れの原因を社会状況、環境から説明し、それを改善するための公共図書館の取り組みについて、狙い、役割、効果の3つを網羅し、答えよ。(800字以上1200字以下)』
…みたいな内容でした。
☆回答
・子供の読者離れの原因
→社会状況
情報化社会進展による映像メディア等の台頭による、読書時間の減少。
→環境
核家族化が進んだり、共働きにより、親が子供の教育に割く時間が減ってきている。
平成29年の文部科学省の報告(子供の読書活動の推進等に関する調査研究)によると、小学生の本を読むきっかけとして最も多かったのが、「家族が一緒に本を読んだり図書館や本屋に連れて行ってくれたりすること」であったことを根拠としました。
読書離れがなぜ悪いのかと考えると、活字を読まないことで、社会性等の「育ちそびれ」が起こることが問題だから、と教科書の内容を理解したので、じゃあ、別に図書じゃなくても問題解決にはなるよね!ってことで、これを挙げました。
子供の成長の過程だって昔からだいぶ変わってきているので、それに合わせた対策は必要かと。
→ ②親へのSNSによるイベントやサービスの広報、PR
小さい子供たちの親世代は、もうSNS世代だと思うので、これを挙げました。読書離れの原因に挙げた文部科学省の報告でも、親の影響はかなりあるようなので、親に図書館に対する興味を持ってもらうよう、誘導するのもありかなと。
★感想
自分なりには、データの根拠を示したり、現代だからこその視点みたいなことを書けたので、満足はしています。しかし、児童サービス論ってなかなか合格取るのが難しいという情報を耳にするので、あんまり自信はありません…。
とりあえず一旦終わってホッとした!
6月20日追記
結果 70点
なんとか合格しましたー。どこで減点されてるのか気になる。